バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

悪魔


 馬車が揺れえる音が聞こえる。



何やら二人、騒いでいる様だ。

「あー! 暇だ!」

「お酒飲みたい~!」

「クソ! 出発してから何日たったんだよ~」

「ねぇ~アル~まだなの~」



アルトリウスは瞑っていた目を開けた。

「は~ホント、せっかちなんだから」

僕は、馬車の先頭に行き御者ぎょしゃに話しかけた。

「すみません、後どれくらいで着きます?」

「そうですね。今日野宿して、明日の朝ぐらいには着きます」



アルトリウスは皆の方を振り向き、笑顔で言う。

「だってさ!」



バレットは背を布の壁に寄りかかり、顔を上に向けて腕の力を抜いていた。

「あ~、もう暇だから雑談しようぜ!」

「いいけど、話すことあんの?....女の自慢話だったら聞かないから~」



バレットは顔を元の位置に戻し、メリネの顔を見た。

「大丈夫! 今回は真面目な話」

「ホントに~~?」

メリネはバレットに目を細め、疑惑の目を向けた。



「バレットが真面目な話をしないと思うけど、一応聞いてみようよ」

と言い、アルトリウスはバレットの隣に座った。



「お前らまったくなぁ~....まぁいいや、でさぁこの前、王のとこに行っただろ?」

二人は頷くのを見て、バレットは質問する。

「俺さぁ、前から気になってたんだけどよ? 王座の後ろにある大剣って誰のなんだ? ただの飾りか?」

「あ! それ私も気になってた! あんな立派な大剣ただの飾りな訳ないって」



すると先まで馬車の後ろの方で、鼻歌を歌っていたノエルが話を聞き、こちらに近づきて来た。

「はいは~い! 私も気になる~!」

静かに本を読んでいたリールーも本を閉じ聞く体制に入った、そして、皆アルトリウスの方を見た。

アルトリウスは震えていた。アルトリウスは握りこぶしを作り、腕を上げ熱く語る。



「皆! 三代目勇気伝を読んでないのかい!?」

僕は皆を見た。

全員、やっちまったみたいな顔をしていた。

昔僕が質問した時、皆が三代目勇気伝読んだことあるっと言っていたので、あの大剣は知っている物だと思っていたのに、僕は嘘を付かれた事に気付き、かなりガッカリし肩の力が抜けた。



バレットが動揺しながら喋る。

「ま、まぁよ! いつか読むからさ! 何か知っているなら教えてくれよ、なっ!」

バレット達は思っていた。アルトリウスは三代目の事になるとめちゃめちゃ熱く語り、軽く二、三時間は捕まるので皆で協力し、知ったかぶりで行こうと相談し合った事を、しかしバレてしまったらもう仕方がないと。



アルトリウスは両手、両膝を床に付け泣いた。

「うぅ....皆して、僕に嘘を付いていたのか....」

ノエルはアルトリウスに近づき、背中をさする。



バレット達は顔を合わせ、やれやれっと首をふり、メリネが喋る。

「アル今度一緒に皆で読もう、だから元気出して」

「うう..本当?」

「ああ! ホントさ!」

そうバレットが言うと、アルトリウス急に立ち上がった。



「きゃあ!」

ノエルはびっくりした。



「よぉ~し! じゃぁまず王座の大剣の事だね!」

「あ....ああ」

アルトリウス急に元気になり、アルトリウス以外は今後待ち受けるであろう、アルトリウス講座に絶望した。



「あの大剣はかつて、エルフの王オリバー・クロムウェル・ウェイ・ルヴァールの武器。そしてあの三代目様の相棒! 最後まで三代目様と共に戦った英雄だ!。平和を実現した後、人国の王となり人族を導いたけど、王と家族は病気になり全員死んでしまった。人々は王を敬い、大剣を王座の後ろに大切に置いてあるんだ!」

「ふ~~ん」



ノエルが手を上げた。

「はい! なんで王はエルフなのに、人族の王になったんですか?」

「いい質問だ! 答えは~分からない! どこにも理由が載ってないんだ」

「はぁ~!? なんだそりゃ」

「ま、あの大剣が何なのかわかったし、私は寝よっかな~」

メリネは床に寝っ転がった。



皆、話が終わりそれぞれ何かしようとした時。

「何している皆! まだ別の話が残ってるよ!」

「え....いやもう今日はいいよ!」

バレットは苦笑いしながら喋った。



アルトリウスはバレットに近づく。

「ダメだよ! 約束しただろ!? 今からでも予習しとくんだ!」

「あ~....」

バレットは逃げようとしている、リールーとノエルの襟首えりくびを掴んだ。

そして、肩を組み、バレットはいい笑顔で喋る。

「皆で! 仲良く! 聞こうなぁー!」

「よし! じゃぁまず......」



この後晩飯時まで続き、皆疲弊した。













朝、遂に目的地に着いた。



アルトリウス達は着替えていた。

「御者さんはここでテントを張って待っていてください。何かあったらすぐ逃げて構いませんから」

「かしこまりました」

着替え終わり。

「それじゃあ行こうか!」

距離にして大体百五十メートルぐらいを歩き、赤い球体に包まれている村?に近づく。



リールーは赤い壁を凝視していた。



「おいおい、こんなんじゃ中に入れないぞ、たっく....」

と言いバレットは赤い壁に触れようとした。



「ダメ!!」

リールーが大きな声を出した。



「うお! なんだよいきなり! びっくりしたー」

バレットはびっくりし、手を引く。



リールーは地面に落ちていた小石を手に取り、ポイっと赤い壁に投げた。

小石は赤い壁に触れた瞬間、灰になった。



「マジかよ」

バレットは驚いた。



アルトリウスはリールーに質問する。

「リールーどうにかして中に入る方法は無い?」

「ふっ」

と言いリールーは杖を赤い壁に向けると、人が通れるぐらいの穴が出来た。

ついでにリールーはアルトリウス達に杖を向けると、体が青い何かに包まれた。

そして、リールーは親指を立てる。



準備はできた。そう理解し全員と顔を合わせ、中に入っていく。

中に入った瞬間、凄い熱気が押し寄せてきた。



暑さのあまりノエルが下を向く。

「あつい....」

「ノエル大丈夫!?」

「う、うん、リールーの魔法で何とか耐えれる」

「そうか、あまり無理しなくていいから」

アルトリウスはノエルの心配をしていると、先に進んでいたメリネとバレットは驚愕していた。

「ひでぇなおい」

「アル、あれ見て」

メリネは指を指す。



メリネに言われ、アルトリウスは指を指した方向を見る。

そこには火で出来た人型が居た。しかも、まるで畑を耕すようにただの火の棒を持ち上下に動かしている。



僕は警戒し武器を構えたが敵意がない。



「どうする」

メリネも武器を構え、聞いていた。



「今、無駄に気力を消耗するわけには行かない」

僕は武器をしまった。



「倒しておいた方がいいんじゃぁねーの?」

「いや、先に進もうまだ生存者がいるかもしれない」

僕はリールーの方を向いた。

「リールー生命反応はあるか?」

「ん」

リールーは指を指した。



「よし、行こう」

僕達は前へと進んだ。











「フフフ、お母さん見て! 今日はこんなにもらちゃった!」

悪魔は火の器に入った塊見せ、塊を食べる。

かなりやつれた女性はその光景をただ見ている。

「お母さん最近元気ないよ? なにかあった?」

悪魔はそう言い、女性に触れようとするが、触れない。

「あぁ..お母さんの笑顔..もう一度みたいなー....」

悪魔は悲しい顔をしながら喋り。誰かが来ているのを察知し、後ろを振り向く。

そこには五人何者かがいた。



金髪の男が喋りだす。

「あれは人? なのか..?」



続いて青髪が喋りだす。

「貴方は人ですか? それとも....」



悪魔の心の中で何かがささやく、あれは君の幸せを壊しに来た者達だ、壊される前に壊してしまいなよ。

私の幸せを壊される?。私の幸せを壊されるわけには行かない!。守らなきゃ。そう思い。

悪魔は金髪の男の目の前に移動し、腹部に蹴りをかました。







バレットが蹴られ遠くに飛ばされる。

「バレット!!」

アルトリウスの声を起点に、皆武器を構えた。



目の前の人?が喋りだす。

「貴方達は、私の幸せを壊す気なんでしょ?」

「違う! 話を聞いて!」

ノエルが説得しようとしている。



僕は気づいてしまった、この姿は悪魔だと。本で読んだときに、出てきたのと似ている。

僕は更に体に力が入る。

「皆! 相手は悪魔だ! 気を付けろ!」

「くっ! これが悪魔か、アル! とりあえず目の前の悪魔は私に任せて、周りを頼むよ!」

と言いメリネは悪魔に突撃し、一緒にその場から離れた。



僕は辺りを見ると、さっき見た人型に囲まれていた。

数にして大体五十、バレットが心配だが今は戦うしかない!。

「リールー、ノエル早く片付けて、バレットを助けよう!」

二人は構え頷く。







「やめてよ!」

悪魔はメリネを吹き飛ばす。



メリネは受け身を取り、体制を立て直す。

「あんたはいったい、何が遭ったんだい?」

「うるさい! 私に話しかけないで! 私の幸せを壊そうとする悪党が!!」

「.....」

メリネの槍は徐々に輝き出した。槍を構え、姿が消えた。

悪魔は目で追えなくメリネを探すが、どこにもいない。

胸元に違和感を感じた、そこには槍が刺さる寸前だった。

さっき消えたはずの人物が、目の前にいきなり現れた。

悪魔は両手で槍を掴み、槍を軸に空中に飛び上がり、メリネの背後に周り、拳を作り、殴りかかる。

メリネは拳を槍の中心部分で受け、突き飛ばされる。

地面に体を擦りながら体制を立て直す。



「ハァ、なんて運動神経なの」



悪魔は両手を見ると少し傷がついていた。

悪魔は更に体が燃え上がり、メリネを睨む。



「ハハ、こ~わ」



悪魔はメリネに接近する。

メリネは悪魔の打撃をかわしながら、カウンターをするが、かわされる。



段々と打撃が早くなっていく。

これは結構ヤバいかも...。っと考えていると、腹部に激痛が走った。

「かはぁ!」

悪魔はこの機を逃さず連続で打撃を与える。



メリネは頭から血が流れ目に入る。肋骨と他の骨も恐らく折れていて、呼吸がしずらかった。だがメリネは特に焦っていなかった。

やられっぱなしって訳にはいかないよ!。そう思うと突如悪魔の手から光の刃が生え、悪魔は手が重くなり両手を下げた。

「さっきの分、お返しするよ!!」

槍をしっかり両手で持ち、下から勢いよく上に上げ、悪魔の片腕を切断した。



「あぁーー!!」

悪魔は悲鳴を上げ、メリネを蹴り飛ばす。

メリネは地面に倒れ伏した。悪魔も自分の腕をくっつけようと地面に座った。



「いたいよ....お母さん....」



メリネは槍を支えに、立ち上がった。

悪魔を見つめていると、遠くから声が聞こえた。



「メリネー!」

声の方を見るとアルトリウス、リールー、ノエル、やつれた女性が居た。

メリネは安堵していると、悪魔も声の方を見て驚いていた。



「お母さん!」

悪魔は立ち上がった。





アルトリウス面々に指示する。

「リールーその女性に水を」

「ん」

「ノエルはメリネの下に」

「わかった」



バレットを探したが何処にもいなく諦めたが、生存者を見つけたのはいい事だが、メリネに無理をさせてしまった。次は僕が何とかしなければ。悪魔を見る。



「お母さんを返せ!!」

「返す! だから争うのは止めよう!」

「うるさい! うるさい! そう言いながら、お母さん殺すんだ! 私の大事な人が死ねとこなんて、もう見たくない!!」

悪魔は失ったはずの腕が火の形で形成され、その手のひらに火の玉を作った。



「まて! お母さんを巻き込む気か!?」

アルトリウスの声は届かない。



僕で防げるのか?そんな不満の中。背後を見て、今は守るべき存在がいる!っと気を強く持ち剣を構えた。



「消えて!」

悪魔は火の玉を飛ばした。火の玉は飛んでくる途中で、どんどん大きくなっていく。



「こい!」

僕は、剣を横に構えた。

目の前まで来た時には、かなりデカく後ろの二人を守れるか危うかった。



地面が揺れ、アルトリウスの手前の地面に亀裂が入り、そこから大きな声を出しながら人が出てきた。

「オラァ~~!!」

勢いよく出てきたのはバレットで、バレット空中に浮き盾を構えた。

「こんな火、大したことないぜ!」

盾が大きくなり火を防ぎ、火は呆気なく消えた。



「ふぃ~、あち~」

盾は元の大きさに戻り、バレットはおでこの汗を拭う。



「バレットどこにいたんだ!?」

「あ? 地面の中で寝てた」

「はぁ~!? まったく....」

と言いながら、アルトリウスは嬉しくなりにやけた。



「な~に呑気に話してんのよ! 私も混ぜろよ!」

「ああ! メリネ! 無理しないの!」

メリネはノエルの肩に寄りかかりながら、アルトリウス達に近づいていた。



バレットは片手を握り拳にし、もう片手を広げ、軽く合わせバチンっという音を立てた。

「おしー! 全員そろったな、さっさと終わらすぞ!!」

全員で「おお!」っと言った。



悪魔は近づく。

しおり