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 幼い頃、想像してみた
 織姫と彦星に子どもはいないのかな?
 実は、二人いるそうだ
 これは今、警察署の面談室で妻に検索してもらった
 だがあの時は、調べようとも思わなかった
 知らないことは、いないこと
 必要ないから存在しないと思っていた
 俺の孫も同じだと思った

「この子は、存在してはいけないんだ」
 自分に言い聞かせる
 今、俺の腕のなかにはかごがある
 赤子の眠るかごが
 隙間には札束が入ってる
 これなら当分の生活費になるだろう
 今夜は七夕
 目の前に孤児院
「恨むなよ
 今夜が良い旅立ちになるよう、祈ってやるからな」
「その子を捨てるの?」
 !いきなり声をかけられた!
 振り向けば、二人の子どもがいた
「す、捨てるわけじゃないぞ
 これは正当な権利だ!」
 思えば、このときは完全に正気を失っていたかもしれない
「この子は、絶対に幸せにならない!
 娘が悪い男に押し付けられてる子だ!
 それにこの顔を見ろ!
 娘にあった気高さが全くない!
 ダメ人間になるぞぉ!!」
 その時、赤い光が視界いっぱいに煌めいた
 パトカーのパトライトだ
 だが、おかしい
 こんなに近くにあるのに、車が近づく気配がなかった!
「放せ! 放してくれ!」
 男が叫んでいる
 この、赤ん坊の父親だ
 警官たちに止められながら、こっちに近づこうとしている
「ダメです! 下がって!」
「絶対に近づけるな!」
 俺と彼の間に、次々に警官が割り込んでくる
 二人の子どもの大きいほうが話しかける
「娘さんの気高さは、あの人に父親の自覚を与えたみたいだよ」
 警官たちの絶対に接触させない構え
 それに目を奪われていると
 
 バッ!

 いきなり、かごを横から奪われた
 あの、子どもの小さな方だ
 俺に警官たちがのし掛かってくる
 一瞬でアスファルトに叩きつけられた
 痛みと共に、もう動けない
 向こうに、赤子を確保した兄弟がいた
「待て! 待ってくれ!」
 誰にも邪魔されず、赤子を父親へ連れていく
「お前たちは、何者だぁ!」
 二人が立ち止まり、俺を見た
 回りの警官たちは見向きもしない
 まるであの時の、気配の消えたパトカーの薄い存在感を、あの二人自身がまとっているようだ
「織姫星のそばに、二つの星がある」
「それが、僕たちさ」

 後は、ご覧の有り様だ

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