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第十三話 【王国】選択肢


 何を言っている?
 俺に聞きたいこと?

「なんだ。狐人族の少女ミア」

「魔王は、これが読めるのか?」

 ん?
 読めるのか?

 何か、紙片を取り出している。
 流石に、俺があそこまで降りていくのは違うような気がする。

「魔王様。私が」

 コアが俺の前に出て、少女ミアの所に向かう。
 少女ミアが、コアや俺を殺そうと思えば簡単にできるだろう。それくらいは、俺にも理解ができる。

 少女ミアは、近づいてきたコアに紙片を渡した。
 コアは、受け取った紙片を持って俺の所に戻ってきた。

「魔王様」

 紙片を受け取る。
 裏返されているのか?
 それにしても、”紙”だ。魔王ルブランは、”紙”を作り出しているのか?

 知識としては持っている。何度か、眷属たちを使って、和紙を作ろうとしたが、うまくできなかった。

「え?」

「魔王。よく考えてから、紙片を読んで欲しい。それによって、我らの行動も変わると思って欲しい」

 紙の文字も読めるし、書かれている()も理解ができる。
 コアを見ると、コアには読めないようだ。

 そうだよな。
 これは、どうみても・・・。日本語で、有名なマンガのワンシーンだ。

「魔王。どうだ?読めるのか?」

 少女ミアの視線が怖い。
 ”読めない”と言えば殺されるのが目に見えている。後ろの3人も武器に手をかけている。あまり時間は残されていない。

 正直に答えるのがよさそうだ。
 それしか選択肢がない。

「読めりゅ」

 噛んだ。

「ふふふ。読めるのですね。何と、書いてありますか?そして、その絵の意味も解りますか?」

「解る。文字は、”ハンターハンター”。絵は、ヒソカが蜘蛛の団長。名前は忘れたけど、その団長と戦っている場面だ。確か、ヒソカが負けるはずだ」

 懐かしい。
 まだ続いていたのか?
 それとも、長期休養なのか?

「そうですか・・・。ちなみに、再開したらしいですよ」

「え?続きというか・・・。マンガが手に入るの?」

 素で答えてしまった。
 娯楽が乏しい世界だ。マンガが手に入るだけでも、俺は・・・。魔王ルブランに絶対の忠誠を誓える自信がある。

「本当に、魔王様がおっしゃっていた反応をするのですね。それだけ、聖典は大事な物なのですか?」

 聖典?
 マンガの事か?

「マンガの事を聖典と呼んでいるのなら、そうだな。俺の世代なら、大事な物だ」

「そうですか・・・」

 少女ミアが後ろを振り向いて、3人になにやら確認をしている雰囲気がある。
 綺麗な女性は、しょうがないという雰囲気で頷いている。
 いかつい男性は、少しだけワクワクした雰囲気で頷いている。
 もう一人の男は、嫌そうな雰囲気だが、少女に見つめられて、慌てて頷いている。

 3人は、武器にかけていた手を降ろした。
 武装の解除はしていないが、すぐに戦う雰囲気ではなくなった。

 もしかして、俺は助かるのか?

「魔王。貴殿に、二つの選択肢を提示する。どちらを選ぶか考えて欲しい」

「え?」

「一つは、このまま、私たちと戦う。戦うのは、私と人族の少年であるヒアだけだ。しかし、甘く見ないで欲しい。魔王ルブラン配下では、上位に位置する二人だ。貴殿たちの有象無象なら私一人でも過剰な戦力だと考えている」

 そうだろう。
 コアの助言がなくてもわかる。少女ミアだけでも、玉座に居る殆どが殺されるだろう。
 それも、抵抗らしい抵抗ができるとは思えない。

「・・・」

 緊張で喉が鳴りそうになってしまった。

「もう一つは」

「もう一つは?」

 言葉を区切らないで欲しい
 期待して、同じ言葉を紡いでしまった。コアが呆れた表情をしている。その表情も可愛いけど、今は辞めて欲しかった。

「・・・。まぁいいでしょう。魔王様に忠誠を誓ってもらいます。私たちが敬愛する魔王様の配下となり、支配を受け入れてもらいます」

「・・・。少女ミア。貴殿が言っている魔王様は、魔王ルブランのことか?それと、配下になった場合に、俺の・・・。私の眷属はどうなる?眷属が、居なくなるのなら、受け入れられない」

「わかりました。貴方も、魔王カミドネと同じなのですね。モミジ様。お願いします」

 少女ミアが、後ろに居る美女に声をかける。
 モミジという名前なのか?

 紅葉?やはり、魔王ルブランは、日本人なのか?

「魔王。我らが魔王様に忠誠を誓ってもらいます」

「わかった。俺は、どうなっても・・・」

「大丈夫です。忠誠を誓うのなら、貴方と貴方の眷属は、魔王様の配下です。命を奪うような事はしません。コアの破壊も行いません。そこの、魔王の隣に居る女性は、貴方の眷属ですか?」

「そうだ」

「そうですか、貴方。ここまで来てください」

「魔王様」

「コア。モミジ殿の指示に従ってくれ」

「はい」

 コアが、モミジ殿の所まで降りていくので、緊張する。

 モミジ殿は、腰に付けていたベルトを外して、武装を解除して、コアに剣を渡した。

「え?」

 モミジ殿だけではなく、少女ミアとヒアと呼ばれた男性といかつい男性も武装を解除して、コアに渡してきた。
 コアだけでは持てないのを見て、何か袋を渡している。

 ん?
 アイテムボックス()なのか?

 高価な物をコアに渡して大丈夫なのか?

 そもそも、全員が武装を解除する理由が解らない。

「魔王。コアの場所に案内して下さい」

 コア?
 あぁ・・・。ダンジョン・コアだな。

「わかった」

 コア・ルームは、玉座の後ろにある扉から行けるようにしてある。
 様式美だ。

 コアを含めて眷属たちには反対されたのだが、押し切った形だ。
 そもそも、玉座まで攻め込まれたら敗北は必至だ。コア・ルームだけ守り切っても意味がない。

 コア・ルームに案内をする。
 モミジ殿がなぜか大きなため息をついている。

 コアも緊張している。
 他の、眷属たちも同じように緊張しているのが解る。

 この段階になって、俺だけが冷静なのが面白い。慌ててもしょうがない。ここまで来たら覚悟も出来ている。

 モミジ殿がコアに触れる。

”ハウス6174。モノリスの魔王に、忠誠を誓いますか?”

 え?
 頭の中に言葉が響いた。

 そういうことか・・・。
 魔王ルブランは、表の魔王なのだな。

 知識が流れ込んでくる。
 それと同時に、問い合わせが来る。拒否したら、多分俺は死ぬことになる。コアも眷属たちも、死んでしまうのだろう。

 もちろん、生き残るためなら、魔王に忠誠を誓う。
 それに、流れ込んだ知識から、魔王に忠誠を誓う方が、俺の・・・。俺たちのメリットは大きい。

「忠誠を誓う。永久(とこしえ)の忠誠を魔王様に捧げよう」

 身体が再構成されるような感覚が俺を襲う。

 異世界で目が覚めた時と同じかそれ以上の衝撃だ。
 殴られたとかではない。身体中を何かが走り抜けた感覚だ。

 でも理解できる。
 これで、俺はこのダンジョンに縛り付けられる存在ではなくなった。

「大丈夫なようですね。これで、貴方たちも、私たちの仲間です。これから、よろしくお願いします。まずは、魔王様に謁見してもらいます。そこで、役割が与えられると思います。それまで、このダンジョンを維持してください」

「え?でも」

「ポイントですか?すぐに・・・。反映されていると思いますが?」

 え?
 ポイントが反映?

「魔王様!」

 コアが慌てて俺に近づいてくる。
 持っていたアイテムボックス()を、モミジ殿に返している。いうまでも持っていたい物ではないだろう。

「どうした?」

「ポイントが、ポイントが」

「ん?」「配分されたようですね。そのポイントを使って、ダンジョンを守ってください。要塞にしても良いです。上に居る者たちは、ダンジョンの中に引き入れて、殺します。いいですよね?」

 コアの慌てている意味がわかった。
 ポイントが、最後に使ったポイントの10倍になっている。

 意味が解らない。解らないけど、どうやら、俺は当たりを引いたようだ。

 最後の最後で、間違えなかった。
 これからも、コアと一緒に過ごせる。眷属たちと一緒に過ごせる。

 魔王様への謁見という、ダメージがダイレクトに、胃腸に来るイベントがあるが・・・。
 上の連中?王国兵?好きにして下さい。ダンジョン内で殺してくれるのなら、ポイントになるので嬉しいです。

 コアを抱きしめた。
 涙が出るくらい嬉しい。

「魔王。用事が無いのなら、魔王様に謁見してもらいます。準備をして下さい」

 え?
 ん?

 コアが冷静になって、俺の身支度を始めた。
 覚悟を決めよう。
 これからの俺たちの為だ。うん。ハンターハンターを使うほどだ。悪いことには・・・。ならないといいな。

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