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結果発表

ローバーが僕たちの基地に着く。ローバーから降り、基地の中に入る。基地の中は変わらずにある。

「寂しいな」
変わらない空間なのに皆んなが居ないからか、寂しい。

「ん?」
愛梨が少し不安そうだ。

「いや、なんでもない……僕はローバーの掃除をしてくるよ」
なんだか基地の中は居づらかった。

僕は再び宇宙服に着替えようとする。
『ダメ、私もやる』
愛梨は僕を引き止めた。

『いや、一人で大丈夫です。あそこは……』
ふと愛梨の顔を見ればとても不安で、少し泣きそうだった。一人はでいるのは心細いのだろう。
『いや、一緒にやりましょう。量も多いですから』

『はい』
彼女は少しだけ表情が良くなった。

僕たちは再び宇宙服に乗りローバーに戻った。ローバーの中は血生臭く基地とは違う意味で居たくはなかった。

『僕は椅子のの血を拭き取るよ』

『わかった、私はフロントガラスの……赤色の汚れをとるね』
やっぱり愛梨には鴻鳥さんの死がキツかったらしい。

僕たちは丁寧に時間がたち黒く変色し固くなった血を拭き取る。だんだんと布巾が赤くなってくる。布巾が赤くなるにつれて本当に僕たちがデスゲームに参加して、皆んなが死んでいってしまったのだと実感する。

『グス……う、グス……』
やっぱ愛梨には辛いかもしれない。人を喜ばせる人がこんなことをする必要は無い。

『愛梨さん、もう辛かったやめていいでよ』

『え、だ、大丈夫です』

『本当ですか?さっきか……』
僕は愛梨の様子を見ようと顔を上げる。
すぐ目の前には彼女の顔があった。今にもお互いの鼻先が触れ合いそうになるぐらいに。

『あ!ご、ごめんなさい!』
僕は驚き、彼女から離れる。

『え?なんで、なんで避けるの?仲間でしょ?』
彼女はフロントガラスを拭くのをやめて四つん這いになって僕のことを少し泣きそうに、悲しそうに見てくる。

『なんで?どうして私を避けるの?ねえ?嫌いなの?どうして!?あの約束は嘘なの?』
彼女は泣きながら訴えてくる。

やっぱり彼女が好きだから恥ずかしいから顔を合わせられない。
「き、嫌いじゃないんだ。ただ、か」

「嘘!、なんで顔も合わせてくれないの?」
彼女は下を向いている僕の顔を両手で上げてくる。
彼女の顔を真近で見る。愛梨の目は涙で濡れ、目元は赤かった。

「僕は、愛梨の、ことが、ことが、す、好きです。い、いつもあなたのライブを見てます!、ファンです!」
僕はできるだけ目を合わせないように横に目をやって言った。

「え?」
愛梨は驚いている。さっと泣き止んだ。

「そうなの?嫌いじゃない?ずっと仲間?」

「うん」

「もう、嬉しい」
愛梨は僕に抱きついた。彼女は笑顔で言った。



掃除も終わり基地の中に戻った。
さっきよりかは気分よくいられる。

「若田くんなんか二人だけになっちゃたね」

「そうですね。今日は疲れましたし、仮眠でも撮りましょう」

「ねえ?もう距離を置かないで、寂しい」
愛梨は僕がまだ彼女に慣れないのに不満らしい。

『わかった。あ、愛梨。こうかな?』

『そう!そうよ。よろしくね?若田!』



急に9000HALが急に基地中のディスプレイをハッキングして現れた。
「皆さんお疲れ様でした。今回のゲームで勝利したのは中国の基地の皆様でした。後ほど報酬を配ります。今回の死亡者は中国による攻撃で日本は二名の死亡。中国とアメリカの戦闘で中国は二名の死亡、アメリカは二名の死亡。ロシアからの攻撃でEUは九名の死亡。以上です」

『急に現れたやがって』
『もう、いや』

9000HALは続ける。
『次のゲームを始めます。次のゲームは今から5日後に我々が火星の北極で人工的に巨大砂嵐を出現させます。そしてその砂嵐をランダムに各国の基地を襲います。この砂嵐は確実に基地の7割を破壊します。』

『なんなんだよ!』
僕は思わずディスプレイに写って居る赤いの点に訴える。

『もう、いや、やりたくない!』
愛梨は膝から崩れ落ち泣き始める。

9000HALは無関心に続ける。
『以上です。皆様の奮闘を祈ります』



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