299章 エマエマの決意
エマエマは布団から起き上がる。時刻はすでに八時三〇分を回っていた。
「ミサキさん・・・・・・」
「エマエマさん、体はどうですか?」
「持ち直しつつありますけど、疲労は大きいみたいですね」
エマエマは室内を見回す。
「キイさんはどこにいったんですか?」
「彼女は帰りました」
「そうですか・・・・・・」
エマエマは寂しそうにしている。彼女の表情を見て、寝かし続けたことを大いに後悔することとなった。
ミサキは起きたばかりの女性に、食事を提供しようと思った。おいしい料理を食べてもらっ
て、活力を養ってほしい。
「エマエマさん、何か食べますか?」
「食べたい気分ではないので、食べ物は結構です」
食べ物を食べられないほどに疲れている。本人は伝えないけど、長期の休暇を取ったほうがよさそうだ。
エマエマは体を起こすと、台所のほうに向かった。
「ミサキさん、水を飲みます」
「どうぞ。飲んでください」
エマエマはプラスチックのコップに、水を少しだけ注ぐ。食べ物を食べられないだけでなく、水分補給もままならないようだ。
エマエマは水を飲んだあと、思いもよらないことを口にする。
「体のことを考えて、長期休暇を取るつもりです。万全の状態になるまでは、お仕事をお休みします」
「エマエマさん・・・・・・」
「緊張の糸を切らしてしまったことで、体は正直な反応を示すようになりました。自身の疲れに対して、素直に耳を傾けたいと思います」
いろいろな人のために、頑張り続けてきた。しっかりと休んで、次の仕事をやってほしい。100パーセント状態を見せることで、ファンの期待に応えることにつながる。
「ファンは減るかもしれないけど、体を大切にします」
「そうしましょう」
「ミサキさん、シャワーを借りたいです」
「いいですよ」
エマエマはおぼつかない足取りで、シャワー室に向かっていく。ミサキは不安だったので、左から支えることにした。