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先輩におねだり?

 星華学園高等部(せいかがくえんこうとうぶ)そこに伊月瑠衣は通っている。一年一組の
教室にいる瑠衣。今は六月で一年生のほとんどは部活に入ったりしている。
 
 瑠衣は当然入っておらず、バイトをしている。

 入学して一カ月目ぐらいの時は部活の勧誘があり、瑠衣も色んな所から
声をかけられていた。
 ここは中学まで住んでいた場所とは違い、知り合いはいないところだ。

 それに容姿もまったく違う感じにしているので、中学の時の自分をしる
者はいなかった。
 なのでそこまでしつこくは誘われなかったが、最初のころはこの
学校のソフトボール部を見に行ったりもしていた。

 真面目になってからはやはり気になるようでちょこちょこ見には
行ったようだ。

 休み時間教室にいると誰かに声をかけられた。それは隣の席の女の子
星川清詠(ほしかわきよみ)だ。活発な感じの女の子で誰とでも仲良く
なるタイプだ。
 そんな彼女が話しかけてきて部活の事を聞かれた。

「伊月ちゃんはどこにも入らないの?」
「うん。バイトしてるから」
「へぇ一年生でバイトか。なんか偉いね。でも部活も良いと思うけど」
「そうだね。でも、私運動できないから」
「そうなの?体育の時いい動きしてた気がするけど」
「それぐらいならね。でも、部活ぐらいの運動は無理なの。医者に止められてるから」
「そっか」
「星川さんは入ってるの?」
「私は吹奏楽部だよ。実は歌手になりたくてずっと歌の練習してるんだ」
「それなら吹奏楽に入らなくても」
「楽器も覚えておいて損はないからね。だから音楽に関する事はなんでも
したんだ。だから今度聞いてほしいな。私の歌と演奏」
「いいよ。私も音楽は好きだから」

 そんな感じで教室で談話したりして学校生活を楽しんでいた。あの時と
くらべて本当に今が楽しいと思っていた。それも凍夜に出会ったからだ。

 放課後、ファミレスホロスに行き着替えて働く。更衣室には大学生の
白井凜子と一つ上で別の学校に通っている女子高校生の時坂夢(ときさかゆめ)
がいた。その夢に瑠衣は部活の事について聞いた。

「部活ね。確かに楽しそうだけど、私はいいかな。それより趣味の方に
時間をかけたいから」
「趣味ですか?」
「そうだよ。実は私、これでライバーなんだ」
「ライバー?」
「知らない?動画を配信する人をライバーっていうんだよ。まぁ私は顔を
出してないけどね」
「そうなんですか。私そういうのもうとくて。でも、夢先輩が出てる
なら見て見たいです」
「ありがとう。まぁゲーム配信だけどよかったら見てね。あとで教えて
あげるから」
「ありがとうございます」

 着替え終わり仕事を始める。ホールに出ると黄色い歓声が響いていた。それは
凍夜がいたからだ。凍夜は全然笑ったりしないが、それでも顔を見るだけで
客達は喜んでいた。
 そのせいでこの時間でも店は混んでいた。ほぼ女性客で埋まっているが。

 忙しい中、少し休憩する瑠衣。休憩室に行くとそこに女性がいた。

「あ!店長お疲れ様です」
「あら瑠衣ちゃんお疲れ様。まだ混んでるみたいね」
「ええ。いつも先輩が出るとこうですからね。あっという間に広がりますから」
「すごいわね今の時代。ネットですぐに情報が更新されるんでしょ」
「そうですね」

 そうおっとりと話しているのはこのファミレスの店長である女性の
井上静流(いのうえしずる)だ。見た目通りおっとりしてる性格で
スタイルも抜群なうえに、二人の子供もいるお母さんだ。
 美人なので彼女目当ての男性客も多い。

「じゃぁ私も出るから伊月ちゃんはもう少し休んでてね」
「ありがとうございます」

 静流はホールに向かった。瑠衣も休憩した後、戻り時間まで忙しく
働いた。時間になり仕事が終わって着替える。
 今は午後の二十二時。学生はほぼいなくなり大人達が来る。なので
凍夜も厨房に移動していた。

 その厨房に瑠衣がいた。

「先輩、ハンバーグ作ってください」
「他の奴でもいいだろ。俺を指名するな」
「いいじゃないですか。先輩の料理を食べて明日も頑張りたいんですから」
「だから俺のじゃなくてもいいだろ」
「そういうなよ祠堂。せっかく指名してくれんだからよ」
「そうだよ。凍夜君。女の子から誘われて断るのは失礼だよ」

 二人男子が凍夜に言う。一人は大学生で眼鏡をかけているが中々
イケメン風の男性だ。もう一人は真面目で同じ高校生の神谷宏(かみやひろし)だ。
 
「そんなのは知らん。だが、いつまでも言われるのも面倒だから適当に
作ってやるから待ってろ」
「ハイ。いつまでも待ってます」
「相変わらずだね。彼女は」
「ああ。まぁこいつに助けられたみたいだからな。とても今の彼女からは
想像できんが」

 瑠衣の事は皆知っている。なので今の変わりように驚いていた。瑠衣は席に
座り凍夜を待つ。その凍夜が料理を持ってきた。

「どうした食わんのか?」
「なんか、思い出しちゃって」
「何度も言うが気にするな。さっさと食え」
「はい。いただきます」

 凍夜に言われ食べ始める瑠衣。今までは早めに食べていたが、凍夜の出した
料理を食べてからはゆっくりと食べるようになった。食べ終わり、食器を
自分で戻す。二人にあいさつをして店を出る。

「やっぱり先輩の料理はおいいしな。できれば店以外でも食べてみたいけど」
「金払うなら作ってやるが」
「!?先輩!あれもうあがりでしたっけ?」
「店長から言われてな。お前を送ってこいってな。だから駅についたら
また店に戻る」
「すいません。ありがとうございます」
「じゃぁさっさと行くぞ」

 駅まで一緒に来てくれる凍夜の横で瑠衣は迷っていた。手をつなぎたいが
凍夜はズボンのポケットに手を入れてるので無理だから腕を組む事は
できるが、それをすると嫌がれそうなので我慢していた。
 そうしているうちに駅についた。

「先輩ありがとうございました。また明日」
「ああ。でも明日はお前店休みだろ」
「学校で会えるじゃないですか」
「そうだったな。じゃぁな」
「先輩!」
「なんだ?」
「・・・・・・おやすみなさい」
「ああ」

 凍夜は振り向き店に戻った。瑠衣は電車に乗り家に戻った。シャワーを
浴びて部屋に戻る。ベッドに横になるとスマホの画面を見る。
 そこには凍夜が映っていた。瑠衣はいつもその画面を見ながら眠って
いた。

 翌日、昼休み。瑠衣の教室に凍夜がやってきてクラスがざわついた。

 

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