162章 アイドルの弱点
「アヤメさん、ミサキさん、お願いします」
アヤメ、ミサキの順番で温泉に入る。
お湯の温度は、39~40℃くらいかな。お湯に長時間つかれるように、ぬるいお湯にしているのかなと思った。42~43℃のお湯だと、10分くらいで限界だ。44℃以上だと、お風呂に入るのも難
しい。
スクール水着は、不要かなと思った。温泉に入るときは、タオルを巻いた状態で入るのがベストだ。
「アヤメさん、ミサキさん。お湯でのんびりとしてください。雑談をしてもらっても結構です」
お湯に入っているだけで、お金をもらうことができる。仕事そのものに、体を疲れさせる要素はなかった。
「ミサキちゃん、とっても気持ちいい」
「うん、すごく気持ちいいよ」
中性のお湯は、肌に対する刺激は小さい。敏感肌である女性にも、入りやすいお湯となっている。
「ミサキちゃんと過ごせるだけで、嫌なことをすべて忘れられる」
アヤメは手を差し出してきた。
「ミサキちゃん、手をつないでください」
アヤメの差し出してきた手を、ミサキはがっちりとつかむ。
「ミサキちゃん、ありがとう」
アヤメは目を軽く瞑った。ミサキもなぞるように、瞳を軽く閉じる。
空からの通り雨なのか、周囲は騒がしくなった。先ほどまでは晴れていただけに、天気の移り変わりの早さにびっくりする。
雷が鳴った直後、アヤメは体を寄せてきた。
「ミサキちゃん、とっても怖い」
天下無敵のアイドルにも、しっかりした弱点を持っている。人間らしい一面に、ほっこりとしてしまった。
ミサキは雷を怖がっている女性を、優しく包み込む。
「アヤメちゃん、雷はここまで届かないよ」
「それでも怖いよ・・・・・・」
言葉を継ぎ足せば、逆効果になってしまいかねない。ミサキは頭をなでることによって、心を落ち着けようとした。
「アヤメさん、ミサキさん、お風呂から上がってください」
シズカの掛け声を聞いたあと、二人はゆっくりとお風呂からあがる。アヤメは恐怖心に支配されているのか、唇は大きく震えていた。