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118章 アヤメがまたやってきた

 感動の涙による効果なのか、雪見大福は空前絶後のメガヒット商品となった。店頭は売り切れ続出で、オイルショック、マスクショック、トイレットペーパーショックを連想させるかのようだった。

 工場は爆発的な大ヒットを受けて、24時間体制で作るようになった。それにもかかわらず、雪見大福は品切れ続出。市場に安定供給されるのは、いつになるのだろうか。

 CM出演料として、100万ペソを渡された。これだけの金額をもらえれば、好きなものを好きなだけ食べることができる。焼きそば店を退職しても、悠々自適な生活を送れる。

 CM会社からは、第2弾の話が舞い込んできた。2週間後の木曜日に、自然成分で作られた、みそ汁のCMに出演する。

 スナック菓子を口にしていると、ドアをノックされる音がした。

「こんにちは・・・・・・」

 すぐに応対したいところだけど、空腹を満たすのが先である。これをやらなければ、気絶してしまいかねない。

 マイ、シノブかなと思っていると、予想外の人物が立っていた。

「ミサキちゃん、こんにちは・・・・・・」

 目をごしごしとこすっても、見えるものは変わらなかった。

「アヤメちゃん・・・・・・」

 アヤメはかぶっていた帽子をとった。

「仕事はしなくてもいいの?」

「特別休暇を利用して、ここにやってきたの」

「特別休暇?」

「2カ月ぶりに、特別な休みをもらえたの。せっかくなので、こちらで過ごしたい」

 2カ月ぶりの特別休暇くらいは、ゆっくりと過ごしたほういいのでは。ミサキはそう思ったものの、心の中にとどめることにした。

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