31章 訪問者
テレビをつけると、女性の水着姿が映し出される。昨日と比較すると、露出度は控えめとなっていた。
水着姿の女性は、笑顔でテレビに向かって手を振る。厳しい社会で勝ち残るために、必死にアピールしているのが伝わってきた。
美女ばかりをそろえているからか、突出した女の子はいなかった。水着姿の女性の中でいうなら、平均レベルにとどまる。
チャンネルをチェンジしようとすると、格の違う女の子が現れる。あまりにきれいだったので、目を奪われてしまった。
「すごい・・・・・・」
なんという名前なのかなと思っていると、女性は自己紹介をする。
「クドウアヤメです。よろしくお願いします」
目を奪うような顔だけでなく、声も一流の域に達している。持っている女性というのは、すべてにおいて優れているようだ。
テレビに夢中になっていると、玄関のベルが鳴らされた。ミサキはテレビを消したのち、来客対応をすることにした。
家のドアを開けると、30くらいの女性が立っていた。
「こんにちは・・・・・・」
「こんにちは・・・・・・」
家を訪ねてきた女性は、名刺を差し出す。ミサキはガチガチになりながら、名刺を受け取った。
名刺のプロフィールを確認すると、「大食い企画会社」となっていた。これを見ただけで、どのような依頼なのかを察知する。
「ミサキさんに、大食い大会に参加してほしいです」
「大食い大会ですか?」
「はい、お願いします」
「どんなものを食べるんですか?」
女性は笑顔で説明する。
「おにぎり、ラーメンなどですね。他のものを食べることもありますよ」
一般的な食材であることを知って、心は落ち着くこととなった。とんでもない食材が提供されたら、どうしようかなと思っていた。
「大食い大会の開催は、2週間後となっています」
仕事とかぶっていたときは、そちらを優先する必要がある。無断欠勤をすれば、一瞬にして信用を失う。
仕事のスケジュールを確認すると、2週間後は休みとなっていた。
「スケジュールに問題はないので、大食い大会に参加させていただきます」
「ありがとうございます」
30くらいの女性は、カバンからパンフレットを取り出す。
「これをお受け取りください」
パンフレットには、大食い大会の詳細が記されていた。
「ざっくばらんに説明すると、大食い大会は、予選、2回戦、3回戦、準決勝、決勝があります。優勝した人には、50万ペソが贈呈されます」
たくさんのご飯を食べられて、賞金をもらうこともできる。ミサキにとっては、天国みたいな場所といえる。
「ミサキさんの参加を、心待ちにしています」
女性はそれだけ言い残し、家をあとにする。