k-20
14:30
サラサとジュノが帰った後、俺は、採取してきたものの分析の時間に当てることにした。
まず、新しく採取した植物の確認から行う。細長い葉に茎にトゲトゲがあり、赤い花が特徴の植物。現時点では、鑑定しても【花】としか表示されない。
葉をもしゃもしゃと食べてみる。ちょっと苦味があるかなというだけで、これといって何もない。そして、再度鑑定してみる。
【ガーベルの花:泥の中に咲く平凡な花、特段の薬効などはない、特に毒などもない】
平凡な花だという鑑定結果だったが、俺はなぜか、この花が気に入った。水と一緒ペットボトルに入れて、小屋の中に飾ることにした。
花だけではなく、木の実と表示されるものもデルーンの実であったりと、有用な発見もあった。ならば、【石】と表示されるものも、有用な鉱石であれば、表記が変わったりするかもしれない。
植物の場合であれば、取り込んで、効用を把握することで鑑定結果が変わった。鉱石についても同様なのではないか。
俺は、採ってきた【石】と表示されたものについて、分析してみることにした。
まず、赤色の石から。歯でかじるのは流石に無理なので、鋼のヤスリで一部を削り粉にして、舐めてみる。舌が熱くなった。水、水。
そして再度鑑定してみると、
【火炎石:火属性をもった石】
単なる石ではなかった。色々と気になる点はあるが、とりあえず保留する。
次に、白く紫色の線が入った石を削って、粉を舐めてみたが、無味無臭だった。
【フェムト石:研磨材の材料となる】
持って来た石はこの二種類だった。石を試しに金槌で細かく砕いて見てから鑑定をしてみる。
【研磨材:金属や宝石を研磨する際に使用すると、効果が向上】
火炎石を、金槌で細かく砕いて鑑定してみると【火炎石の粉】と出る。これを、研磨材と混ぜてから再度鑑定すると、【火炎研磨剤】と出た。
俺は、またもクエスチョンを体全体で表現する。首をかしげ、体が斜めになる。
これはどういうことだろう。火属性とはなんだ。RPGではお馴染みの単語だけれども、そのままの意味なのだろうか。研磨はそのままの意味だろう。
確か砥石はある。草刈鎌などの農具用のものが。俺は棚から砥石を引っ張り出す。
試しに、解体用のダガーに火炎研磨剤を振りかけ砥石でシャッシャッと砥いでみた。しばらくそうしていると、刀身が薄く赤く輝き出した。
俺はダガーを鑑定してみる。
【ファイアダガー:劣鉄製、火属性が付与されたダガー】
『個体名:奥田圭吾は鍛冶Lv1を取得しました』
どうやら、『砥ぐ』という行為は鍛冶になるようだ。
試しに、ファイアダガーを薪に突き立てると、プスプスと煙が出て、しばらくすると発火した。
ショートソードも同じく、火炎研磨剤を作成し、砥ぐことにする。ダガーの時よりも、結構な量の火炎研磨剤が必要となりそうだ。
なお、ダガーの時に使用した火炎研磨剤を再度鑑定してみたが、ただの【粉】になっていた。
シャッシャッシャッシャ。砥げども砥げども、ショートソードが変質する気配がない。
念のため鑑定してみても、【ショートソード:銑鉄製。通常品位素材の剣】、粉のほうも【火炎研磨剤】と表示される。
結局、ショートソードに火属性を付与することはできなかった。
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なんと火属性付与をしてしまった主人公。すごいことのような気がしますが、異世界ではありふれたものなのかもしれません。
あと何でも舐めて確かめるのは危ないんじゃないかと思うのは、きっと私だけではないはず。
中途半端な鑑定のせいで死にかける、パート3と言ってもいいのかも……。