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15章 夜の9時を迎える

 夜の9時を迎える。

 妖精の話によると、朝の7時になるまで、空腹になることはない。これから10時間は、ゆったりとしたひとときを過ごせる。

 リラックス気分を高めるために、入浴しようかなと思った。体を癒すことによって、心に安らぎを与えられるといいな。

 両親が離婚してから、お風呂に入る機会はなかった。久しぶりということもあって、気持ちは大いに高まっていた。

 浴室の広さは一般家庭クラスではなく、温泉クラスとなっていた。一人分のスペースとしては、あまりにも広すぎる。

 お風呂のスペースが広くなるほど、お風呂掃除にかかる時間は長くなる。これくらいのスペースになると、30分くらいはかかるのではなかろうか。お風呂に入るたびに、30分も掃除するのはきつい。一回のお風呂の掃除は、5分くらいで終わらせたい。  

 浴室に青のボタン、黄色のボタン、赤のボタンが並んでいた。これを見ていると、信号なのかなと思ってしまった。信号では青が安全、黄色がやや安全、赤が危険となっている。

 青いボタンを押すと、お湯が湯船に注がれていく。じっくりと待っていれば、お風呂に入ることができる。

 お湯がたまるまで、本を読もうかなと思った。家の本棚には、3000冊くらいの小説が置かれており、読む本に困らない。

「白米と幸せ」という、本を手に取ったあと、一ページ目を開いた。

 一ページ目には、5人家族が楽しそうに団欒する、内容が書かれていた。当たり前の光景のはずなのに、遠い存在に感じられる。

 おとうさんが子供に対して、鶏のから揚げをよそう。その言葉を読んでいると、幸せの絶頂なのかなと思った。

 二ページ目を開こうとしていると、浴室から透き通った声が聞こえる。

「お風呂ができました」

 お風呂がわくまで、10分とかからない。豪邸の設備は、予想の斜め上をいっている。

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