コンビニおもてなしのNEW その5
オザリーナ村にありますコンビニおもてなし6号店。
その2階にあります会議室で開催されています毎週恒例のコンビニおもてなし関連店舗の責任者会議ですが、本日最後の話題としまして、新店舗の建設をどこにするかの検討をすることになりました。
候補地は2つ
1つは、王都のすぐ南に建設中の商業都市ホープ
ここは、ドンタコスゥコ商会のドンタコスゥコから打診があったお話です。
もう1つは、王都からかなり東に行った場所にある辺境都市ウリナコンベ
ここは、商店街組合のエレエから打診があったお話です。
この2店に関して、店舗検討部門のブリリアンに調査をしてもらっていたのですが、
「条件としては圧倒的に商業都市ホープの方がいいと言わざるを得ませんね。この世界最大の都市である王都まで荷馬車で30分もかからないという好立地に加えて王都近隣を周回している定期魔道船や駅馬車といった交通網がしっかり整備されていること。その定期魔道船の利用客が王都からも多数押し寄せると予測されますので、かなりの売り上げを期待することが出来ます。
ただし、商業都市ホープのデメリットといたしましては、ドンタコスゥコの推薦があったとしても抽選次第になる可能性が高いところでしょうか」
「つまり、条件は最高に良いけど、絶対に出店出来るわけじゃないってことか」
ブリリアンの言葉に、僕は大きく頷いていきました。
「次に、辺境都市ウリナコンベですが。ここにも定期魔道船が就航しておりますので交通の便は悪くありません。ですが、この都市はつい最近までこの世界最大の闇組織と言われていました闇の嬌声が実質的に支配していた辺境都市なんです。その闇の嬌声がこの都市を放棄する際に、城壁や建物を破壊し尽くしておりまして……今はその復興作業の真っ最中です。
この都市へ出店を決めるとなりますと、役場近くの一等地を確保出来る可能性が高いです。
ただしデメリットもございまして……と、いいますのも、闇の嬌声が街中を破壊しまくったせいで街の人々が近隣にある辺境都市バトコンベやリバティコンベに逃げ出してしまっているんです。交通網も、駅馬車網がまだ整備途上なのも難点です」
ブリリアンは、手に持っていた資料を読み終えると、会議室内を一望していきました。
それを受けて、椅子に座ってブリリアンの話を確認していた僕は席を立つと
「そういうわけで、みんなには商業都市ホープか辺境都市ウリナコンベのどちらに出店すべきか、検討してもらいたいんだ」
そう言いながら、会議室内のみんなを見回していきました。
途端に、会議室の中がざわざわしはじめました。
「そりゃやっぱり商業都市ホープだよなぁ」
「しかし、辺境都市ウリナコンベも、今出店すれば一等地にお店をだせるわけですし……」
「う~ん~……マジ難しい問題、みたいなぁ」
そんな話し声とともに様々な意見が聞こえてきます。
中には「いっそのこと2箇所同時に出店したら駄目なのかな?」なんて意見もあったのですが、コンビニおもてなしの現在の方針といたしまして、1店舗ずつ支店を増やしていき、しっかりと軌道にのってから次のお店にとりかかることにしているんです。
その後も、会議室内はざわざわし続けていった次第です。
◇◇
その後、1時間近く、ああでもないこうでもないといった議論が繰り広げられていきました。
最終的に、
「店長さんのご意見に賛同させていただきますわ」
「そうですね、私もそれがいいと思います」
そんな意見を口にした、5号店東店店長のシャルンエッセンスの意見に、みんなも賛同したわけでして……
正直なところ、これは想定していませんでした。
「……とりあえず、どっちへ出店するのがいいかは決まると思ってたんだけどなぁ」
会議を終え、自宅である巨木の家へと戻って来た僕は、自分の部屋に入ると腕組みしながら考えていました。
商業都市ホープか……
辺境都市ウリナコンベか……
そんな事を考えながら、僕は責任者のみんながあれこれ発言していた内容を思い出していました。
……そのまま、あっという間に小一時間が経過していました。
「……そうだな、ここはやっぱり……うん」
そう、ブツブツ呟いていた僕は、席から立ちあがると、その足で出かけていきました。
向かった先は……商店街組合の建物でした。
ここで、蟻人のエレエが辺境都市ウリナコンベへ転勤する準備をしているはずなのですが……
「…あ、いたいた、エレエ!」
「はいですです?……って、あぁ、店長さんじゃないですですか!」
僕の顔を見るなり、エレエは嬉しそうに笑顔を浮かべながら僕の元に駆け寄ってきました。
その周囲には、いくつかの木箱が置かれていましす。
おそらく、今まさに転勤の準備を行っていたってとこなんでしょうね。
「忙しいところごめんね。実は例の辺境都市ウリナコンベへの出店の話を受けさせてもらおうと思ってさ」
「ほ、本当ですですかぁ!!」
僕の言葉に、エレエは頬を赤く染めると、その顔に歓喜の表情を浮かべていきました。
「……でも、よろしいのですです?」
「ん? 何がだい?」
「いえ……てっきり王都に近い商業都市ホープを選択なさるものとばかり思っていたですですので」
そう言いながら、相変わらず嬉しそうにしているエレエ。
「確かに、短期的な目で見れば商業都市ホープへの出店の方が条件としてはいいと思うんだけどさ。辺境都市ウリナコンベは今からどんどん発展していく都市じゃないか。その都市の発展と一緒にコンビニおもてなしの新しい支店も成長させていくことが出来たらな、と思ってさ」
僕は、そう言いながら笑っていました。
こうして、コンビニおもてなしの新しい支店の作成場所が正式に
辺境都市ウリナコンベ
へ、決定したわけです、はい。
◇◇
これを受けまして、僕は回覧板を作成していきました。
で、出来上がった号外的なぺーパーを手にした僕は、それを板挟みに挟みまして、朝の荷物輸送の際に、コンビニおもてなしの各支店の責任者の元へと届けもらいました。
「みんなの感じはどうだった?」
「そうね、みんな概ね好意的だったと思うわよ」
そう言いながら僕に回覧板を返してくれたヴィヴィランテス。
その号外ペーパーには、
頑張りましょう
既存店もがんばります
といった書き込みもなされていました。
そうですね、新店舗だけでなく、既存店もこれからも頑張っていかないといけないわけです、はい。
そのペーパーを見返しながら、僕は自分自身に気合いを入れ直していました。
「さて……となると、新店舗のオープニングスタッフを考えないとな……」
僕は、新たにそんなことを考えはじめていました。
さぁ、コンビニおもてなし7号店がこれから開店するわけですけど、既存店に負けないように頑張っていかないといけませんね。