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29話〜魔聖剣【挿絵】

 サアヤ達は自分達の部屋に行き、ルルーシアは一旦ギルドにある自分の部屋に戻っていった。

 その後ブラットは、直ぐにベットに横になり眠った。

 しばらくして、熟睡しているブラットの部屋の窓から、いかにも怪しい女が入ってきた。

 すると、その女は寝ているブラットの目の前に来て、手で口を塞ごうとした。

 しかし、ブラットは無意識に、

「……ふぁにゃ〜お肉だぁ〜いただきまふ〜」

 ブラットは、その女の手を噛んだ。

 その女はブラットに手を噛まれ泣きながら、

「い、痛い〜!!ちょ、ちょっと何なのこいつ、寝ぼけて私の手噛んだんだけど」

 ブラットはその声で目が覚め、辺りをキョロキョロと見渡した。

 そしてブラットは、目の前に知らない女がいる事に気がつき、

「……ん?あの、どちら様ですか?」

「はっ!しまった。寝てる間に縛りあげて連れて行こうとしたのに」

「……って、どうなってるんだ?この状況って?もしかして、俺ピンチなのかぁ?」

「まぁいい、話ではまだ弱いと聞いているからな。強行手段で黙らせて連れて行くしかないな」

 ブラットはベットから降りて近くにあった使えない聖剣を手にした。

「何なんだ!何で俺が、こんなに狙われなきゃならないんだ!」

「なるほどな。自覚していないみたいだな。自分が何なのかを」

「知るか!?俺は、2日前までは普通の暮らししてたのに……何で」

 ブラットは聖剣を強く握った。

「その剣は、お前には使えないのだろう?どうする気だ」

「確かに使えないかもしれないけど、悪いかよ!今の俺には、これしかないんだ」

「ふっ、まぁいい。では、行くぞ!」

 その女はブラット目掛け、細身の剣を振りかざした。

 その時、窓から黒いローブの男が入ってきて、

「困るんだよなぁ。エリーゼさん、そいつはこっちの獲物なんでね」

「なっ!いったい、お前は何者?それに、何故私の名前を知っている?」

「さあ、誰でしょうか?まぁ今はそれどころではなく、いやでもそいつを、ある人の所に連れて行かないといけないんですよねぇ」

「これって?どうなっているんだ!?」

「まぁ、どっちにしろ。こいつは、私が連れて行く」

()()()、それはさせないと、言ってるだろうがぁ!?」

 黒いローブの男はエリーゼに短剣で斬りつけた。

 エリーゼは避けようとしたが右腕に傷を負った。

「ま、待て⁉︎いったいこれって?何なんだよ‼︎」

「エリーゼさん。アンタは、そこで見ていればいい。こいつは俺がもらって行く!」

「待て、クソッ!」

 すると、窓から男が入ってきた。

 その男は、さっきサアヤ達が言っていた青の聖衣を着たレオルドだった。

「……これって?俺、完全にアウトなんじゃないのか!?」

「エリーゼ。かなり、てこずっているようですね」

「あっ!これはレオルド様、申し訳ございません。まさか、邪魔が入るとは思いませんでしたので」

「まぁいい。エリーゼは、その男をやれ!私はこいつを眠らせ連れて行く」

 レオルドはブラット目掛けて氷の魔法攻撃をしかけてきた。

 するとブラット目掛け無数の氷の刃が降り注ぎ、剣を盾にするが威力がありすぎて避けきれずにあたってしまった。

「クソッ〜、たく何なんだよ。逃げられるなら逃げたい気分だ!」

 ブラットは泣き出しそうになっていた。

「ほう。かなり、打たれ強いらしいな」

 レオルドは呪文を唱えようとしていた。

 それを見てブラットは、また強く聖剣を握った。

「クソッ!この聖剣……何で、俺に使えないんだよ」


 ……聖剣が、かすかに光った。しかし、誰もそれに気づかない……


 そしてサアヤは物音で、ブラットの部屋での異変に気づき扉を壊し入ってきた。

 すると既にレオルドは、

 《アイス ケージ!!》

 呪文を唱えていた。

「クッ、間に合わない!」

 サアヤはブラットを助けようとした。

 しかし、その魔法はブラットに直撃しようとしていた。

「うわぁ〜死ぬ〜!?」

 ブラットは怖さのあまり、更に聖剣を力一杯握り目の前に翳していた。

 
挿絵


 すると聖剣が黒い光を放ち一瞬で、その魔法をかき消した。

「えっ?これって、いったい何なんだ!?」

「さぁ、流石に私にも、何がなんだか分からないのだが」

「こ、これは流石にまずいですね。それに、サアヤまでもが来てしまったとは」

「レオルド!お前、どういうつもりだ?これは皇帝の差し金なのか?」

「さあ?そうだとしても言うつもりはありませんが」

「レオルド様、申し訳ございません!今ので、逃げられました」

「エリーゼ、仕方がない。今日の所は、退散するとしましょう」

「おい待て!?レオルド……」

 レオルドとエリーゼは逃げていった。

 そしてサアヤはブラットの方に行き、放心状態のブラットを見ると、

「おい、ブラット大丈夫か?」

「えっ?あ、ああ多分、大丈夫だと思うんだけど。いや、あれはいったい何だったんだ?」

「そうだな。確かに、私もあれには驚いた。まさかお前が……だが何故聖剣がこうなった?」

「俺はただひたすら、聖剣を力一杯握っていた」

「なるほど、そういう事か」

「何か、分かったのか?」

 そしてサアヤは聖剣を手にとり、

「やはりな。ブラット、これを見てみろ」

 ブラットは聖剣を手に取ってみた。

 すると聖剣の形と色が変わっていた。

「これって、親父の聖剣なんだよな?」

「ああ、そうだが全く違う物になっている。恐らくは無意識にブラットが元々持っていた能力が発動したのだと思うが、まさか聖剣を造り変えてしまうとはな」

「俺が造り変えたのか?これを……」

「ああ、そうだ!お前が、自分が使えるものに変えた。それに、さっきのを見る限りだと、その剣は魔法を放つ事が可能だがもう聖剣とは言えない。そうだな……これは魔聖剣と言った方がいいだろうな」

「魔聖剣って、ははは……」

「それにしても。まさか、私が引き出したお前が元々持っていた能力が、ここで役に立つとはな」

「はあ、そうだなぁ……って!これ、親父の聖剣。あーどうしよう〜怒られる〜」

「まぁ、大丈夫だろう。一応、ブラットが貰ったんだろう?」

「ああ、そうだけど」

「なら大丈夫だと思うがな。まぁ、それよりも。これからは、その剣を使いこなしていかないとな」

「そうだな。でも、大丈夫かなぁ」

「ブラット。もう少し自信を持って動け!そうすれば少しはマシになるとは思うんだがな」

「はは、はぁ……」

「はぁ、まぁ今日は、このぐらいで、後は明日考えるとしよう。流石に眠いしな」

「そうですね。そういえばフェリア達は?」

「私は偶然にも部屋にいなかったおかげで回避する事が出来たが、あの2人はレオルドに眠らされぐっすりと寝ている」

「そうか、なら良かった。じゃ、俺も眠いので寝ます」

「そうだな。私も寝るとするか、それじゃおやすみ」

 サアヤは部屋から出て行った。

「おやすみなさい……」

 そして、ブラットはベットに横になり、しばらく色々と考えていたが、いつのまにか眠ってしまったのだった…。

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